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1章:条件
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「キスはできない、セックスなんてもってのほか」
恥じらいもなく、こんな人混みでよく『セックス』なんて単語口にできるな…
……でも桜色した亜椰の小さな唇から、そんな単語が発せられたと思うと…
──…いや、今は止めておこう。
「あ、それと手繋いだりも嫌」
え……?
目が点になるとは、まさにこのことだろう。
亜椰の言葉に、なんて返したらいいかわからなかった。
キスもセックスも禁止。
ここまでは理解したとしても、手を繋ぐことも禁止って…それじゃ付き合ってるって言わない…よね…?
でも僕は、亜椰のことを彼女と呼べるわけだから、今までよりは進歩したことになる…?
「この条件が呑めないなら、今の話はなかったことにして」
頭を悩ます僕を後目に、亜椰は言った。
「呑める!呑めるよ!」
亜椰も亜椰なら、僕も僕だ。
「なかったことにして」という一言で、停止してしまっていた筈の僕の思考回路は、亜椰の条件を呑むことを了解した。
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