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1章:条件 (3/6)


亜椰を初めて見たときは、幼いながらに衝撃を受けた。
この世の中に、こんなにも美しく、儚い人がいるのかと。
これが『女』なんだ、そう思った。


けど、亜椰という生物を知っていくにつれ、彼女が力強いことも知った。
同級生の男たちに比べて、何倍も力強い。
そんな謎めいていて神々しい亜椰に、夢中になるまで時間なんて必要なかった。


幼稚園、小学校、中学校、高校と亜椰はいつもクラスの中心…いや、学校の中心にいた。
どこに行っても、『綺麗』だとか『可愛い』なんて褒められていたり、いろんな人の憧れだった。


それに比べて僕は、幼稚園から高校まで、ずっとイジメを受けてきた。
誰にも気付かれない場所で、陰湿なイジメは繰り返され…終いには誰が主犯かわからなくなる。


そんな僕と亜椰は、生きる世界が違う。
まるで陰と陽みたいな僕と亜椰が、付き合うなんて…男女の関係になれるなんて、夢にも思わなかった。


けど、浮かれる僕を上目使いで見つめてから亜椰は、甘ったるい声で言った。

「でもね、条件があるの」

その目つきと声に、僕の鼓動が速くなる。

「…条件?」

「うん」

「条件…て…なに?」

亜椰は煙を吐き出してから、短くなった煙草を消し、寂しげな表情で言った。

「あたしね…男の人って苦手なの」

「あぁ…うん…」

亜椰が男性不信というか、男性恐怖症というか…男と関わらないようにしてきたのは、わかっている。
でも男が苦手な亜椰が、なんで僕と、付き合おうと思ってくれたのか…

「なのに付き合ってもいいって思った理由…わかる…でしょ?」



あぁ、そうか…。
そういうことか…。

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青い花 ©著者:壱乎

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