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6章:瞳
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例えば、昨日の夜にかかってきた、母親からの電話。
『誕生日おめでとう』
待機所のアパートから抜け出して、慌てて出た電話の向こうからは、懐かしい母親の声。
「え?」
『やぁだ、あんた、自分の誕生日も分からないの?』
「あ…、ううん、大丈夫」
何が大丈夫なのか、
適当な相槌を打ちながら、もう年も明けるな、なんてことをぼんやり考えていた。
今年もあと、残すところ1日。
『あんた正月、帰ってくるの?』
「うーん、と、」
大晦日は店が休みだし、特に予定もないし、帰ろうと思えば帰れる。
けど、正月は3日から店が始まるし、もう出勤予定も入れてしまったし、
『帰るんなら誕生日のケーキ用意するし、早めに連絡よこしてね?』
母親の優しい言葉に、じんわりと心が暖まるような気がした。
けど、
それと同時に沸きおこる、
罪悪感。
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