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5章:枷
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蝉の鳴き声で夏の到来を知り、気が付けば夏も本番と言われるころ、
あたしは季節の変わり目をぼんやりと見過ごし、だけど、毎年過ぎていく夏とは違う。
「…こんにちは」
夕方の公園は、昼間よりも少しだけ寂しい。
あたしが挨拶をすると、ベンチに座っていたその人はにっこり笑い、
「こんにちは」
と、よく通る声で挨拶を返してくれた。
仔猫を埋めた公園に、その人は頻繁に姿を現すようになった。
そしてあたしも、ベンチでぼんやり空を見上げるその人を見かけるたび、何故か足が公園へと向かってしまう。
夏だというのに真っ白いワイシャツは長袖。
短いスカートからは、日焼けを知らない真っ白な脚が除く。
「もう学校終わったの?」
「終わりましたよ、…今日もサボったんですか?」
「行こうと思ったんだよー、ちゃんと制服も着て、用意して家出て、」
「じゃあ来れば良かったのに、」
「ここ来てぼーっとしてたら行きたくなくなったんだもん。」
言い訳をする子供みたいに、ぷいと顔を背ける仕草も、この人がやるとすごく可愛く見えるのはどうしてだろう。
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