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3章:世界の外側
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昼休み、友達が話していた噂を思い出す。
入れ墨、
3年生、
明るい髪の色、
「仔猫だったの、」
きゅ、と水道の蛇口を捻り、先輩が静かに口を開く。
「仔猫だったの。親猫がね、遠くから見てたの。じっと見てた。」
「………」
「あたし、親猫がいない隙に仔猫を運んできたの。」
「そう…なんですか。」
「いまごろ、親猫が探しているかもしれない。」
あたしの方を見ずに淡々と話すから、まるでひとりごとを言っているようだった。
実際、ひとりごとだったのかもしれない。
「寂しいね。」
泥で汚れたワイシャツを気にもせず、鞄を肩にかけた先輩は、そのまま公園を出ていった。
スタスタと歩いていく後ろ姿を唖然とした気持ちで見送り、自分も帰らなければ、と鞄を肩にかけた。
ふと、仔猫の眠る木の下を振り返ると、ぽてん、と何かが置いてあるのが見える。
近付いてみると、うちの学校の生徒手帳だった。
拾いあげて確認すると、自分のものではない。
そっと中を開くと、さっきまで一緒に穴を掘り続けていたその人の顔。
写真の横には、
“皆瀬樹里”
世界の外側に居る人の、名前があった。
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