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1章:春
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1章:春
私は春になると決まってまだ幼かった頃の楽しかった日々を思い出す。
ワラビやよもぎやセリ、ツクシが顔を出し始める頃。山のタラの芽が伸びる頃。
これは気の早いつばめが軒下に巣を作り始めるほんのちょっと前の、日差しが淡い春の話しだ。
この時期になると、まだ若かったその頃の母は俄然、張り切り始める。
「明日はみんなで草摘みよ」と笑う。
母のその一言で、翌日の日曜は家族揃って田んぼや山へ楽しいハイキングになる。
海苔を巻いた梅干し入りの大きなおにぎりを持って出かけた。
真っ白なご飯と梅干しの深紅。
玉子焼きとたくあんの黄色が目に鮮やかだった。
昭和三十年代の横浜は、まだそんなことが出来る田畑や山が沢山あった。
帰ると母は大忙し。
アクが出ないうちに摘んだり採ったりしたものを茹でなくてはならないから。
その日の夜は季節の香りたっぷりの、新鮮なよもぎやタラの芽の天ぷらだった。
大皿に山盛りの御菜も、長時間歩き回った後の食欲で、見る見るうちにカラになってしまう。
翌日、学校から帰ると茹で上がったよもぎのタップリ入った草餅がもう作られていて、食卓の上に乗っていた。
貧しいながらも、両親の愛情いっぱいに育った小学生時代、
世の中のみんなが質素だったから、少々のつましさなど、ちっとも恥ずかしいことではなかった。
でも、そんな好きな草もちにも、私の心には長い間わだかまりを残した、ちょっとした苦い思い出がある。
昭和33年の春
私たち家族は栃木に住まいを移した。
次男坊で苦労知らずだった父は、高度成長の波に乗ることも出来ずに、
生き方が下手だったらしく、この頃が一番貧乏な時期だったらしい。
翌年、その地で小学校に入り、初めての遠足の日だった。
母は少しばかり残っていた砂糖を使って草もちを作ってくれた。
その頃はまだお菓子を買うお金などなくて、おむすびの他に何か持たせたかった母の、心づくしだったのだろうと思う。
草もちがたった五個だけれど、立派に出来上がった。
「ほら、美味しそうでしょう」
「先生にも差し上げるのよ」
そう言ってにっこり笑った母は、弟に見つからないようにとそっと、リュックサックに包みを入れてくれた。
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草餅 ©著者:吾が肺は2個
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