大教室の後ろのドアを開ける。

始業30分前だというのに席の６割は埋まっていた。たくさんの顔がこちらをばらばらに伺い、また視線をそらす。私は彼らのお目当てではない。 なんだ、あいつか。そういう目だ。

語学と一般教養は大体メンバー固定のクラス授業なせいでどれもこれも見知った顔ばかりだ。聞きたくなくても耳に入るおしゃべりのせいで彼らのバイト先も友好関係も大体分かってしまっている。指名のある授業なら成績も見当がつく。

ないのは親しみばかりだ。