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5章:家庭
真菜は自室に入りドアを閉めると糸が切れたようにその場にへたり込んだ。
家に着いたのは8時。今は9時半。自分のストレス解消のために娘の過去のありとあらゆる失敗や恥辱を引きずり出して、並べて、責めまくるのも大概にしてほしい。
毎度お馴染みの「お説教タイム」のとき、真菜は緩く意識を薄めることを覚えた。いかにも真剣に聞いています、反省してますというふうを装ってその実 完全に馬耳東風でいることを身に付けたのだ。
真菜の頭にはつい今さっきの90分の記憶はない。嵐のような時間の間ずっと、図書館借りた小説の物語を反芻していた。
そういえば、今日はほかにもすごく情けなくて辛いことがあったような気がするがそれすら今は靄に霞んでいる。
目を閉じた。このままからだが腐ってドロドロに溶けても私は驚かないだろう。それくらい疲れて、汚らしい気分だった。
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