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26章:生きること
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これは君が、修行を始めた頃の話だよ。
智恵の菩薩様が教えてくれた。
場所は中国だ…
唯小子という子供が、博識で有名なロン氏を訪ねた。
ロン氏は、太い胴を揺らしながら、ゆっくりと話す巨漢だ。
「坊や、何を聞きだいのかい?」
「生きることについて教えていただきたいと思います…」
子供は、弱々しく聞いた。
「そうだな!生きることで最も重要なことは、考と忠の心を持つことだよ。そしてそのために勉強をすることだ。」
「?」
「いいかい?漁や商いをすれば、その日の糧を得ることはできる。しかし懸命に勉強をして仕官すれば、一生食うに困らなくなる。」
「???」
「その上で親孝行をし、主君に忠を尽くせば、世間での評判が良くなり、君の名を歴史に残すこともできるようになるのだよ!」
自信満々のロン氏。
唯小子は、ため息をつく。
そこに、ひょろりと痩せた老人が現れた。
竹林を住処とするドウ氏だ。
「ロン氏よ!何とくだらない事を教えているのだ!」
この老人は、みすぼらしい服を着ているが、眼光は鋭い。
「何が立身出世だ!栄華を極めた始皇帝でさえ、不老不死を求めて、老醜を晒したわい。身と心を不浄にしたからだ。わしにはお前の太い身体が、日々朽ちているのが良く解るぞ!」
ロン氏は、真っ青になって言った。
「ドウ先生!あなたは、どのような生き方をしているのですか?」
「わしは自然に生きとるよ。自然の声に耳を傾け、清浄なる物を食し、清浄なる心を持つことだ。そうすれば心は軽くなり、寿命も長くなる。」
すると唯小子が笑い出した。
「あなた方は、今をどう生きるか?ということしか考えられないようですね?」
ロン氏に向き直り、問う。
「親孝行をし、忠を尽くし、それで人々の悩みを救ってあげられるのですか?歴史に名を残せば、生きる苦しみから救われるのですか?」
次にドウ氏の眼を見て、諭す。
「清浄な生き方をして、誰かの役に立っていますか?もし誰の役にも立たない生き方ならば、それは価値のない生き方です。」
疲れたのか…ひと息入れて
「しかもお2人は、幾多ある生の中で、ただ1度の生のことしか見えていませんね?」
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あの子達を悼む ©著者:白坂積雪
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