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27章:死ぬこと
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ロン氏とドウ氏は驚いた。
「幾多の生?」
唯小子は続ける。
「命は輪廻転生を繰り返します。このことを知らずに生を説くのは、小枝を見て巨木を論ずるようなものですね。しかしながら…」
ロン氏に再度向き直る。
「自分のことしか考えられない時代に、一定の行動規範を示したあなたの教えは、人間になったばかりの人達にとっては、ありがたいものになるでしょう。そして…」
ドウ氏の顔を見る。
「心身の内部、心のありように目を向けたあなたの考え方は、さらに1歩進んだものと言えます。」
話しているうちに、唯小子の身体がだんだんやつれて、縮んできた。
それに気づかず、蕭然(しょうぜん)としてロン氏が問う。
「命は、連綿と続いていくのですか?…」
「いいえ!ひとたびの生に比べれば、輪廻転生は遥かに確固としたものです。しかし、それでも永遠というわけではありません。この世に永遠なるものなどないのですから!」
ドウ氏が、苦しげに聞いた。
「なんという話だ!いったいあなたはどちらから来られたのか?」
唯小子は笑いながら答えた。
「輪廻転生を理解したら、そのような質問は無意味になるものを…過去にあなたの親だったこともあれば、別の生き物同士で闘ったこともあるでしょうからね(笑)」
彼の顔は、もう土気色だ。
「今のこの身がどこで生まれたのか?ということならば、それは海の向こう、東方の小さな国からと答えましょう。」
そして…
「あなた方でもこれ以上の話は、理解できないでしょう。もう少し、生を重ねてからお話しましょうね。」
そこまで話して唯小子は、崩れるようにパタッと倒れた。
2人に看取られながら、そのまま息を引き取ってしまったのだ。
ロン氏は嘆いた。
「ああ私は…今にも死のうとしている子に…考だの忠だの歴史に名を残すだのと…何というくだらないことを教えようとしたのだろう。」
ドウ氏は、ただ泣いていた。
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あの子達を悼む ©著者:白坂積雪
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