《18:10》
西新宿のLOVEのオブジェの前に煙草を吸って俺は立っていた。
通勤帰りのサラリーマンやOLが多い。
赤のアウディが止まる。
18時過ぎに真希子から電話が来たのでこのオブジェの前で待っていると伝えておいた。
煙草を捨てて車に乗り込む。

「お疲れさま。」
そう言うとびっくりした顔で俺を見る。

「は、はい…。」

「ん？何か変？」

「最近お疲れさまなんて会社の部下以外に言われた事がなくって。
主人にも娘にも…。」

「ふーん、そっか。」
計算の範囲だけどね。

「ありがとうございます。嬉しいです。」

「別に…。真希子が仕事して来たから言っただけじゃん。」

「あっ!?これ…。」
後部シートからヴィトンの小型のボストンバックを取り俺に渡す。
俺は何も言わず中身を確認した。

「このバック借りといていい？」

「いえ差し上げます。」

「あっ!?そう。じゃあこれ。」
ブルゾンの内ポケットから写真とネガを渡した。

「はい。ありがとうございます。」

「とりあえず半分ね。」
そう言うと黙って頷いた。