「ねえ、こっち来て…」
ベランダから梓が俺を呼ぶ。
ベランダに出ると夜が明けかけてて薄紫色の空が広がっていた。
肌寒い空気が心地よかった。

「これ覚えてる？」
梓の掌の上にはシルバーのピンキーリングがある。

「ああ…」
俺は曖昧に頷く。

「BYE-BYE！飛んでけぇー♪」
梓は薄紫色の空に向けリングを放り投げた。

リングは日の光を浴びてキラキラ,゜.:。+゜と輝きながら放物線を描く。
その後金属音を奏でアスファルトを転がり側溝の穴に落ちた。

「お前…いいの？
あの穴に落ちたら拾えないよ。」

「うんいいの。
アズにはもう必要ないものだから…
思い出は記憶の中にあるし、リングはトオルにいつか買ってもらうし(笑)
それにいつまでも持ってたら嫌でしょ？」

「別に。」

「トオル？トオルが「いんじゃん」とか「別に」って言う時って本当は否定したいのに、しょうがねえかって諦めはいってる時でしょ？」
俺の顔を下から覗き込みながら言う。