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12章:決断
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「もしもし」
『…はい』
一言で寝起きだとわかる声。
寝てたのかよ、この状況で。
家に帰って薫を寝かせて、小一時間した頃。
俺は愛香に電話をかけた。
「花です」
『あぁ、うん』
受話器の向こう側が、もそもそと騒がしい。
「薫のコトで、今晩お時間ありますか?」
『ん〜、今日ちょっとダメね』
あくび混じりに断られた。
「え…じゃ明日は」
『忙しいから、
日時はこっちから連絡するわ』
一方的に電話は切られた。
あれだけ誘拐だなんだとわめいておいて、今度は忙しいから来れないと言う。
何なんだ?
何なんだよ。
お前にとって薫は何なんだよ?
大事なんじゃないのか?
大切な大切な子供なんじゃないのかよ?
プーップーップーッ。
俺は終話音の響く携帯電話を、静かに閉じた。
そうして一週間。
愛香から連絡はなかった。
一週間も何の連絡ないので、痺れを切らした俺は、また自分から愛香に電話した。
「もしもし」
『…はい』
また寝起きの声だ。
「花です」
『うん』
「薫のコトですけど」
『あぁ…じゃ今日お店行くわ』
「え?あの、店じゃなく、もっと
落ち着いて話せるところが
イイと思うんですけど・」
プーップーップーッ。
通話は、また一方的に切られた。
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薫と花 ©著者:柚木
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