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10章:離れた手
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薫が帰ってきて数日。
近所だが引っ越しも済んで、俺達はまた日常を取り戻しつつあった。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。あ。
薫、晩飯なにがええ?」
「…任せます。花…に」
はにかみながらそう言って、薫は家を出て行った。
薫は俺のコトを花と呼ぶ。
俺がそう呼ばせていた。
初めは“花さん”とか言っていたが、呼び捨てにさせた。
俺は薫と、友達同士みたいな家族になりたい。
家庭教師的役割を終えたあとも、桃はよく我が家に遊びに来た。
「私はカオたんのママだもォん☆」
とか言って、俺がいない夜は薫と一緒にいてくれている。
正直、助かってる。
もう、あんなコトはゴメンだ。
心配し過ぎて心臓壊れるかと思った。
俺の中で、もう薫はなくてはならない存在になっていた。
離れるなんて想像もつかない。
例え親が出てきたって。
何度でも言う。
薫の“親”は俺だ。
絶対に譲らない。
絶対に。
繋いだ手は、離さない。
…あのとき、繋いだ手を離さなければ…
俺達は今とは違う道を歩いていたのかな、姉ちゃん。
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薫と花 ©著者:柚木
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