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8章:選んだ道 (2/8)

特に何の波風もなく、俺達の日常は平和に過ぎていた。

「ねぇ、花。私お見合いさせられる」

ある日の仕事中。
突然のリンの告白に、俺は驚いた。

「え?は?」

状況が把握できずに混乱している俺に、リンは続ける。

「お父さんの会社の
取引先の人の息子さんと…」

なんかドラマみたいな話だ。
リンてお嬢様だったんだなー。
そんな話を聞いても、俺みたいな一般市民には、まるで現実味がない。

「お見合いなんてしたくないの!」

俺の腕を掴んで、リンが潤んだ瞳で見上げてきた。
と、とは言われまして、も(;´〓`)

「リンちゃん、それ俺は
どーしようもできないよ?」

「…付き合ってよ、花」

おぁ。
来ったぁ…

ホストっつか水商売やってたら避けて通れない道よね、これ。
好意持たれてナンボなわけだし。

でもさ、ぶっちゃけお客さんとキャスト…接客する側が恋愛関係になるのって、あんまないと思うんだよね。
やっぱさ、残酷なようだけど、こっちは仕事だし。

「…付き合うって、どこに?」

へらっと笑いながら、ふざけ半分に答えてみた。
間髪入れずに、右ストレートが飛んできた。

「痛い(ノ〓`)」

「私、本気なんだからね!!」

怒られましたー。
でもね、俺だって君を傷つけたくないから、わざとあんな言い方したのに。

だって求められてる答えは、あげられない。

「ゴメン、ね」

それしか言えなかった。
俺も一応No.1ホストのくせに、不器用だよな。

リンが涙を滲ませてるのに、俺はわざと気づかないフリをした。
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薫と花 ©著者:柚木

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