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4章:天使と悪魔 (2/10)

「泣かないで、ちー」

「だって、ひっく、姉ちゃ…っく」

泣きじゃくる俺の頭を、優しく撫でてくれる白い手。
俺はその手が大好きだった。

「姉ちゃんは大丈夫だから、ね?」

俺は小さい頃から泣き虫で、10歳になってもそれは直らなかった。

「ちーは男の子なんだから、いい加減
その泣き虫、直さなきゃ…あ」

ポタ。

床に、血が落ちた。

「姉ちゃ!」

額を赤い体液が滴り落ちる。

「ありゃ…頭、どっか切れてたか」

しまった、という顔をする。
まるで自分が悪いかのように。

そんなわけないのに…
悪いのは全部アイツなのに…

「おぉい、酒まだかーっ」

リビングから聞こえた声に、俺達姉弟は反射的にびくりと体を震わせた。

悪魔の声だ…

「ひーよーりぃっ、陽依!まだか!」

「い、いま持って行きますっ」

慌てて立ち上がる姉…陽依が持っていた、盆に乗ったビンビールを、俺はとっさに両手で掴んだ。

「ちー?何してるの?やめて。
早く持っていかないと、あんたまで…」

ふるふると首を振る陽依に、俺は小さな声で。

「俺が…俺が行くよ」

と言った。

「何言ってるの!あの人は姉ちゃんを
呼んでるんだから、ちゃんと
姉ちゃんが行かないと…っ」

「だって姉ちゃん、ケガしてるじゃん」

「!」

「さっきアイツに吹っ飛ばれて、
柱に頭を打ったからだろ?」
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薫と花 ©著者:柚木

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