4章:天使と悪魔 (3/10)

アイツ…アルコール依存症の暴力男。
戸籍上、俺と陽依の父親。
でも俺達は血縁関係があるわけじゃない。
アイツは母さんの再婚相手。
俺達姉弟は、母さんの連れ子だ。

本当の父さんは病気で死んだ。
幼かった俺には覚えられなかった、なんか長ったらしい病名で。
確か、俺がようやく小学校に上がる年くらいだ。

父さんは優しかった。
サラリーマンだった父さんは、いつも定時で帰ってきては、小さい俺達と遊んでくれた。
休みの日は、やれ動物園だ、やれ水族館だ、とあちこちに連れて行ってくれた。

俺達姉弟は父さんが大好きだった。
あの頃が一番幸せだった…
母さんもたくさん笑っていた。

…今じゃ母さんは泣いてばかりいる。
アイツに殴られて腫れた顔で。

「ゴメン、ゴメンね…」

泣きながら俺達に謝るんだ。

「私があんな人と再婚しなきゃ…」

母さんは父さんが死んでから、ずっと塞ぎ込んでいた。
俺達もずっと心配してた。

だから最初にアイツが現れたときは、ちょっと安心したんだ。
母さんが、昔みたいに元気になってくれるかもしれないと思ったから。