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3章:王国
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薫は素直な子だった。
俺のいうコトはよく聞いてくれたし、お手伝いも進んでやってくれる。
ワガママも言わないし、今どき珍しいくらいの良い子だった。
でも、それが小さい頃から植えつけられた虐待に対する恐怖故なのかと考えると、俺は何とも言えず切ない気持ちになる。
だって9歳なんて、やんちゃな盛りじゃないか。
俺なんて、山に川にと走り回ってたよ?
姉と暴れまわって服を破いたり、怪我したりして、よく母さんに叱られていた。
それがワガママ一つ言わず、俺に気を遣ってるのか、何をしたいかとかも、自分からは特に言わない。
そんな薫を見ると、切なくなる。
薫は字が書けなかった。
学校や、幼稚園にすら通ったコトがないという。
だから簡単な読み書きもできない。
ひらがなすら書けなかった。
俺は薫に読み書きを教えてやった。
そして練習がてら日記を書くように、とノートを一冊あげた。
普通の大学ノート。
それとシャーペンと消しゴム。
それらを入れるのに、小さな缶ペンも買ってやった。
薫は破顔して喜んだ。
俺までつられて嬉しくなった。
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薫と花 ©著者:柚木
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