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8章:The past (2/7)

2人で花火を見に行った日から、俺はアラシの部屋に寝泊まりしだした。
とは言っても昼間は学校だし、夜は仕事だし、ホントほぼ寝に帰るだけなんだけど。

それでも、少しでもちぃと一緒にいられるコトが嬉しかった。





「リョウ」

待ち合わせ場所に着くと、既に待っていたアリスが俺を見つけるなり顔を綻ばせた。

「すみません、遅くなって」

オケの練習が長引いて、俺は珍しく待ち合わせにちょっとだけ遅刻してしまった。

「いいよ、リョウが来てくれただけで
アリスは嬉しいから」

にっこりと笑って、さっそく腕を絡めてくる。
いつも通り、豊満なバストをくっつけながら。
俺は気を紛らわすために、頭の中で楽譜を追いまくった。

それにしてもまた露出度の高い服装だ。
胸元のガバッと開いたTシャツに、すれ違う男達は釘づけ。
並んで歩いてると前方からくる男は皆、鼻の下のびのびなのがわかる。

「ねぇ、リョウ。お願いがあるの」

スタバで不意にアリスにそう言われて、俺はキョトンとしてしまった。

「何ですか?」

「…アリスのお母さんに、
逢って欲しいの」

「え?」

俺は意味がわからなかった。
なんで俺が、アリスのお母さんに逢うんだ?
混乱する俺に、アリスは続けた。

「お母さん、ガンなの。
最近わかったんだけどね…
もう長くないんだぁ。
でもアリス、昔から好き放題やってて
お母さんに恩返しみたいなコト、
したコトなくって…
だから、せめて安心させてあげたいの。
アリスは幸せだよって。だから…」

婚約者のフリをしてくれ、とアリスは小さな声で言った。
“ガンの母親”。
俺は言葉が出なかった。

死んだ親父を、思い出していた。
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無題 -side涼介 ©著者:柚木

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