1章:〜幼稚園〜 (14/14)

新しい幼稚園では、平和だった。


人を遠ざける傾向があった僕には
友達と呼べる友達は一人も居なかった。


しかし、以前の様に無視をしたり
気分を害する態度は取らなくなった。


挨拶されれば満面の笑みで返し、
話し掛けられれば明るく受け答える。


いつしかそんな生き方に慣れてきて
周りからはとても良い子と思われていた。


幼稚園も卒園式を迎え、父も母も出席した。


何枚もの写真を撮り、とても嬉しそうだ。


桜の花びらを浴びながら門をくぐった時、


「無理しちゃだめ。心を開いて」


そう誰かが呟いたのを聞いた。


卒園生とその親でごった返していて
声の主が誰かは分からなかった。