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10章:そして、店長へ
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「社長」
「なんや」
「もう一度だけチャンスをください」
去年の12月 コメダ珈琲で初めて社長と会った日がなぜか浮かんだ
あの日が懐かしいといえば懐かしかった
知らず知らずの内に僕はあの頃の気持ちを失くしていたのだろうか
腕を組み、コツコツを足音を立てながら社長は店内をゆっくり歩いていた
「俺はおまえが店長だと決めたんや 店長としてやってもらうからのぉ」
鬼の表情は変わらないままに社長は僕に告げた
ほんの僅かな針穴くらいの大きさでもいい その光が今は全てだった クビになってもおかしくないと思っていただけに救われた それと同時にもう馬鹿な真似はやめようと心に決めた
帰宅すると佐山さんから着信があった
「そういうことだからさ、頑張ろうよ」
「全部知ってたんですか」
「知ってたよ」
明日から始る《店長》としての[S]での毎日が不安でないといえば嘘になる
2003年、7月 阪神タイガースが早くもマジック点灯、世界水泳選手権で日本人選手が新記録で優勝し、名言を残したこの年
[S]の店長として迎えた夏
一人の男との出会いが僕を変えてゆく―
第九章 〜そして、店長へ〜[完]
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