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3章:懐かしい者
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外に出ると…救急車と消防車が町外れに
向かって走り去っていく。
…直感的に工場が気になった。
自転車のペダルを力一杯踏み締め
工場に向かう。
途中、工場の辺りから黒煙が上るのを
目の当たりにした俺は、動揺して
近くの茂みに突っ込んでしまった。
…こんな時に何ヘマしてんだよ俺…
焦るばかりで自転車が抜けない。
すると…急に横から人の手が伸び、
草と同化した自転車を引きずり出した。
海「あ、ありがとうございます」
男「んな事いいから早く行けよっ!」
茂みの影で顔は見えなかったが
体は細身だが筋肉質。恐らく30代。
だが、そんな興味すら消し飛ぶ程の大声。
海「は、はい」
今はとにかく黒煙の上がる工場へ。
もしかしたら工場は無事かも知れない。
もう一度、ペダルを踏む足に力を込めた。
男「気をつけろよ!俺が見ててやる!」
あまり意味の分からない声援を受ける。
…感謝はしてるが何か変な人だ…
ようやく工場に着いた。
近くに居た警察官に状況を尋ねる。
警察官「危ないから下がってなさい。
…放火されたんですよ、この工場。
犯人は先程現行犯逮捕しましたが…
逆恨みってヤツですよ」
妙に落ち着いた警察官が多少不満だったが
海「犯人の逆恨みって何なんですか?」
警察官「…まだあんまり教えたりしちゃ
いけないんですけどね…
以前近くの民家で放火未遂で逮捕された
連続放火魔が居たでしょう?
今回の犯人はあの男の兄なんですよ。
なんでも、彼は弟の犯行を邪魔した
真の『邪魔者』を知ってたそうです」
…あの事件、俺が止めたんだよな…
んで…真の邪魔者?俺の事じゃんか…
警察官「家が分からなかったから仕方なく
その相手の職場に放火した、という事です」
海「…工場の中は…誰か居るんですか!?」
警察官「ほとんど逃げ出しました。ただ…
年配の男性が一人、行方不明だそうです。
…………あっ…待ちなさいっ!」
俺は、走り出していた。
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