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53章:ある女の人が (1/2)

53章:ある女の人が


ある女の人が学生の頃に強姦されました。

男性不信になった彼女はずっと男性を避けていましたが、会社勤めをしているうちに、そんな彼女に熱烈にアタックしてくる人がいました。

その男性の優しさや
「こんな自分でも愛してくれるんだ」
という気持ちから、彼女も彼と交際を始めました。

そして交際を重ねて二年、ずっと清い交際を続けてきた彼が彼女をホテルに誘いました。

彼女は
「大好きな人とできるのだから怖くない」
と自分に言い聞かせましたが、やはりベッドの上でパニックを起こしてしまったそうです。

その時、彼は彼女が泣きながら切れ切れに語る辛かった過去を辛抱強く穏やかに聞き、最後に泣き伏してしまった彼女に
「ずっと大変な事を一人で抱えてきたんだね」
と頭を撫でたそうです。
そして彼女の頭を一晩中撫で続けながら、彼女に語りかけていたそうです。

「これからはずっと俺が守るから。もう怖い思いはさせないから」

「焦る事は無いよ、ゆっくりと分かり合おう」

「君はとてもキレイだよ、ちっとも汚れてなんかいないよ」

「ごめんなさい」と繰り返す彼女に、彼は一晩中優しく語り掛け

「いつか、君が僕との子供が欲しいと思う時まで、心で深く分かり合っていこうよ。
僕が欲しいのは君の体じゃなくて君自身だよ」

と言い、その後彼女と結婚するまでの五年間、おでこにキスくらいまでの清い交際を続けました。

そして結婚してからも焦る事無く、ようやく初夜を迎えることができたのは結婚後二年経ってからだったそうです。



そして、私と弟が生まれました。

弟が二十歳になるのを待って、母が初めて子供二人に語ってくれた話でした。

その話を聞いたとき、母の苦しみや父の愛情、そしてそれに母がどれだけ癒されたのか、今ここに自分の生がある事のありがたさを知って、ボロボロと泣きました。

お父さん、お母さん、愛し合ってくれてありがとう。

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ちょっと泣ける話 ©著者:メルシー

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