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52章:夜這いにこない? (1/1)

52章:夜這いにこない?


大学のとき、高校の同級生の女の子がALSを発症した。
そう親しくもない子だったし、ALSってどんな病気かも知らなくて、軽い気持ちで大学の近くにあったその病院に、ひまつぶしで見舞いに行っていた。

ある日彼女が、病室で言った。

「あたし処女のまま死ぬのってイヤだなあ、ねえ今度夜這いにこない?」

その晩実際に夜這いに行った俺を迎えた彼女は、病院の寝巻姿ではあったが、髪はちゃんと整えてあり、うっすら化粧をして、下着も当時流行り始めたTバックだった。
行為そのものは少々やっかいで、彼女は自分で脚を開くこともできなかった。
彼女はわざとらしい喘ぎ声をあげて、なんとか無事終ることができた。
そのあと俺に寝巻きを着せてもらいながら、彼女は嗚咽していた。


翌日俺の実家に彼女の母親から、

「息子さんの優しいお見舞いに感謝します。」

と電話があったという。

俺はまさかと思ったが、しばらくして戦慄した。


彼女はもう、起き上がることすらできない。
トイレだって行けないから、たぶんおむつの世話になっているはずだ。


では誰が?

彼女の髪をとかし整えてやったのか、彼女に薄化粧を施してやったのか、彼女のおむつを脱がし、流行りの下着をはかせてやったのか‥

それがわかったとき、嗚咽とはいかないが不覚にも涙が出てきた。


あれから8年、彼女はもはや目も動かせない状態で今も闘病を続けているという。


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ちょっと泣ける話 ©著者:メルシー

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