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4章:母の愛
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4章:母の愛
もう二十年くらい前の話です。
私は小さい頃親に離婚されて、どっちの親も私を引き取ろうとせず、施設に預けられ、育てられました。
そして三歳くらいの時に今の親にもらわれたそうです。
当時の私はその自覚などしておらず、記憶は無く、その親を本当の親と思って中学2年まで過ごしてきました。
そして、突然の父との別れが訪れました。
脳梗塞で帰らぬ人になりました。
そして、その最悪な時に、私とその親は家族どはないということを、親戚の方から偶然にも知ってしまったのです。
葬儀のあと、私は母を問い詰め、本当の事を聞きました。
その時を境に、私は母を嫌いになりました。
死んだ父でさえも嫌いになりました。
多分、裏切られたとか思ったんでしょう。
元々家が裕福ではありませんでした。
ですから父が死んでしまったので、母が働きに出ざるを得ませんでした。
母は、朝は近く市場で昼から夜にかけてはスーパーで働きました。
それもこれも全て、私のためのものでした。
そんな雨の日、雨合羽を来て市場から帰ってくる母とすれ違いました。
当然無言です。
その姿はなんとも淋しく、哀しく、辛そうに見えたのです。
涙が溢れました。ぐしゃぐしゃに泣きました。
私は一体何をしているのか。
ボロボロになってまで私を育ててくれているあの人に、私は何をうっとうしく思っているのかと、凄まじい後悔が私を襲いました。
私は友達の目にも気にせず、母に駆け寄りました。
でも、何を言っていいかわかりませんでした。
その時、ふと口をついた言葉が
「いってきます」
でした。
言えた言葉はたったそれだけでした。
でも、母は一瞬驚き、そして泣きました。そして何度も何度も
「いってらっしゃい」
と言ってくれました。
私が友達の元に戻ったあとも、母は私を見ながら手を振って、
「いってらっしゃい」
と言ってくれていました。
今では、彼女こそが本当の私の母親です。
たとえ戸籍上はどうあれ、そう思っています。
恩は返しきれないくらいあります。
母は、
「それが親の勤めだよ」
と言いますが、でも、じゃあ今度は子として、親の面倒を見ていきたいです。
この人が母親で、最高に良かったと思います。
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