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7章:カルテ
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「この神社はね、安産祈願では有名な場所なんだよ」
クリスマスを目前に控えた12月下旬の寒い日の事だった
私は田中君に連れられて鎌倉にある神社を訪ねていた
田中君は両親の影響なのか?若いわりにはやたらと風水や縁をかつぐのが大好きな男の子だった
「…にしてもこの忙しい時期によく休めたね?大丈夫だったの?」
「…いや〜1日位休まないと死んじゃうよ…今日の休みが終わったら冗談抜きで当分は働きづめだよ」
「…じゃあこの子が物心ついてもパパがデパートに勤めてる間は家族でクリスマスを祝うなんて事もないわけね…」
「…!!…そ、そんな寂しい事言わないでよ弓〜」
大袈裟ではなく京都旅行を終えた以来ずっと田中君は働きづめで…帰りも私より遅くなる事がほとんどだった
私は毎日田中君の部屋に行き夕食を作ってお風呂を沸かして彼の帰りを待っていた
二人でご飯を食べながら毎日子どもの名前を考えた
あーでもないこーでもないと笑い合いながら…
年明けから住む新居もようやく田中君の職場にほど近い人形町に決まった
ホームセンターの方は別に通え無くもなかったのだが……どうせなら綺麗さっぱり新宿から縁を切りたかった私はソープ同様年内で辞める事を決めていた
…あと少し…
あと少しで私は今までの自分と完全にさよならをする
そしてそこから……全く新しい人生が始まるんだ
禁酒中の私は田中君のグラスにビールを注ぎながらそんな事を考えいた
「使う機会が無くて勿体ないからこれからはこれでビール飲もうよ♪なんかリッチな気分になるかもよ♪」
ひと月ほど前のそんな田中君の提案で…私達はふざけて缶ビールを頂き物のシャンパングラスに注いで飲んでいた
…私は目の前にあるシャンパングラスの中でシュワシュワと音をたてながら消えていく泡にじっと見入っていた
モヤモヤした感情が沸き上がっていたが決して向き合ってはいけないと思っていた
「…弓?…何ぼーっとしてるの?!」
…はっと私は我に返りこう言った
「…ううん、何でもない!いや…ただなんか私の人生こんな幸せでいいのかなって…」
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狂ってた… 後半 ©著者:弓
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