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3章:空の匂い
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「いや、…でも本当に山下さんと遊べるなんて緊張しちゃうな…今日迷惑じゃなかったですか?」
「はは…自分から誘っておいて何よ〜全然迷惑なんかじゃないよ!…ささ今日は田中君の就職祝いなんだから沢山飲もう!」
「…ありがとう!悩んだけど勇気出したかいがあったな〜うん、いっぱい飲みましょう!」
…と、目の前に座る田中君と私はビールで乾杯をした
池袋にあるチェーン店の居酒屋
あの日の田中君の送別会から10日が経っていた
はじめは特に乗り気なわけでは無かったが…水野さんのやたら熱烈すすめもあり…私はこの日田中君と二人でサンシャインでデートをしたのだ
当初は本当に暇潰し程度の軽い気持ちだったのだが…もう随分長い間客とホスト以外の男と関わりを持ってこなかった私にとって…平凡な大学生である彼とのデートは単純に新鮮で楽しかった
勿論女慣れしまくったトワや代表や秀二君の様にエスコート上手で…背中の痒いとこまで完璧に手を届けてくれる様な居心地の良さもなければ…その女の子のツボを把握した上でのハイレベルの笑いのセンスも彼には無かった
しかし当時の私にとって田中君には田中君にしか無い独特の居心地の良さがあったのだ
今から思うにおそらくそれは…彼自身の中身がどうのよりも…
この男なら絶対に他の女が絡んでこないし私だけを見てくれると言う安心感
彼には悪いが多分それだけだったと思う
トワといる時ほど刺激やトキメキを感じる事も無いがトワといる時ほどのあの強烈な不安や切なさを味わう事もないだろう
恋愛において…トキメキを感じられない虚しさよりも…嫉妬や不安にかられる虚しさの方がその時の私にとってははるかに恐怖だったのだ
もう快感はいらないから安定が欲しい
普通の女の子になりたい
その日を境に私は田中君と付き合う事にした
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狂ってた… 後半 ©著者:弓
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