気配を感じて、ヤバいと強く強く思った瞬間と同時に突然訪れた死への直感。



駅からそう遠くない、そこそこ人通りがあるこの道をあと500メートルほど真っ直ぐ行けばちょっと名の知れた寺がある。




天気のいい初夏の日。




アッと思った瞬間


近くにいた女子高生たちの笑い声


仲間よりかなり早めに産まれてしまった孤独なセミの鳴き声


自分の親と同じ歳くらいのおばさんが自らの家の前を竹ぼうきで掃く音



日常の音が全部消え



自分が？
周りが？



否、全てが




全ての動いていたものが



スローに見えて…




そのゆっくりとした世界の中



ひときわ早く動く影が
自分に向けて黒い気を放ちながら向かってくる




ああ



視線が影を捉えた時



包丁らしきものが左わき腹に抵抗なく入っていくのが見えた。