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22章:初愛 (3/6)

工藤とサクラは付き合い始めたが
ぶっからかせな工藤は、気に入らない事があると、平気で怒鳴り散らし暴れた。

サクラはその度に工藤の胸ぐらを掴み、工藤のワガママを叱り、喧嘩の度に二人とも痣だらけになった。


どんなに大声で怒鳴り脅かしても
鼻血が出るほど殴っても
涙一つ見せずにやり返してくるサクラに
工藤はどんどん夢中になっていった。


臆せずに、自分と向き合ってくれる女。

こんな女、今まで一人もいなかった。


工藤は次第に暴力をふるわなくなった。

殴らなくても、この女ならわかってくれる。
怒鳴らなくても、この女なら理解してくれる。

工藤は、サクラを愛した。


一方、サクラも工藤を愛し始めていた。


その激しい気性のせいで、子供の頃から孤独だったサクラ。

美しい容姿からは想像もつかない程の激しい本性に気が付くと、大抵の男は逃げて行った。

しかし、工藤は違う。

モップを振り回して暴れても
酒瓶を投げつけて部屋をメチャクチャにしても

工藤は逃げずに受け入れてくれた。


似た者同士の二人。

お互いの温もりが心地好くて、離れると身体も心も冷えてしまう。

…離れたくない…

二人がそう思い始めた頃
サクラは工藤の子を妊娠した。



プレジデントから降りたサクラの元に、近くの雀荘から出てきた工藤が走り寄り、大振りな数珠ネックレスから香木の香りがふわりと漂った。


車に乗り込み、狭い日陰の路地に消えて行く二人。

十字路に立っている飲み屋の黒服が工藤の車に気付き、頭を下げて挨拶をした。
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透明な世界 ©著者:品川

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