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6章:郁子ー憧憬(どうけい)
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腕の中で彼女は満面の笑顔で真っ直ぐに向き合う。
その純粋な笑顔を見て、一気にして黒い感情が増幅した。
(何も俺のことなんて、解ってないよな……)
感情の抑制が外れて、郁子の服に乱暴に手を掛けた。
驚く郁子の口を手で塞ぎ、強引に下着を剥ぎ取る。
豹変ぶりに郁子はたじろぎながら、それでも哀憐の眼差しを、ふっと閉じた。
(じゃあ俺は、何を解って欲しかったんだ……?)
「郁子ごめんな……俺どうにかしてたよ……」
はっと気付き、力を緩める。頭に手を充てて優しく抱きしめた。頬を寄せながらも、貴章は眼を外す。
「結婚してくれ……」
眼を見られたら、心の底から湧いた言葉では無いことを見抜かれるだろう。
【郁子と一緒になったら幸せになれるのだろうか……】
と考えるのではなく、
【郁子と一緒になることだけが俺の幸せなんだ……】
と思うことにしよう。
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愛ヲ乞ウーー遺された心 ©著者:七斗
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