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4章:最初の“別れよ”
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夏も終わり風が少し冷たくなり、優太と一緒にいてから、2度目の秋が来た。
『……チッ。』
私は耳にあててた携帯を乱暴に閉じて、少し肌寒くなってきた夜の街並をイライラした気分で歩いていた。
…何でこんな時に優太は電話でないのよ…。
私は先程までいた職場での出来事を思い出してはまた一人毒づいていた。
気分の悪い日には普段なら普通に思える事が、なぜか腹立たしく感じてしまう。
駅の改札口をくぐった時に優太から着信がきた。
『…もしもし?』
私は不機嫌丸出しの声で電話にでた。
「…ゴメン。職場抜けらんなくて…どうした?何か元気ないけど。」
私は職場であった出来事をまくし立てる様に、優太に話した。
優太はいつもと変わらない優しい口調で、相づちを打ちながら最後には私に対してアドバイスをしてくれて、私の苛立ちは少し安らいできた。
『…うん。うん。わかった。
…今日、仕事終わったら家で飲もうよ。』
「…う〜ん。今日ちょっと残業になっちゃいそうで遅くなっちゃうと思うんだよな。」
私は安らいできた苛立ちがまた、ふつふつと沸いてきた。
『…あっそ。じゃぁいーや。1人で飲むから!』
「…沙羅…」
優太が何か言い掛けたが私は一方的に電話を切った。
近所の居酒屋で酒を購入してスーパーで時間帯割引になっているお惣菜を買い込み家に帰った。
家に帰ると、お惣菜をテーブルいっぱいに広げてお気に入りのグラスを冷蔵庫に冷やしておき、私は少しでもさっぱりしようとシャワーを浴びた。
……ふぅッ。
…やっぱり風呂は気持ちいいな。
私はバスタオル一枚だけを体に巻き付け、そのまま冷蔵庫に直行して冷えたグラスに缶ビールを注いで一気に飲み干した。
火照った体に冷えたビールが、喉の奥から全身を駆け巡るようだった。
私はグラスをテーブルに置いてテレビをつけた。
テレビには私と優太が大好きな芸人が軽快なトークで笑いを誘ってくる。
テレビを見ながらパジャマに着替えてソファーに座り、お惣菜をつまみながら今度は日本酒を飲む。
…あ。これ美味い。今度、優太と食べよ。
…この芸人、今度近くで舞台やるんだ…優太と行こうかな。
…あ、そーいえばこれ…優太が………。
私は、ハッとした。
…優太、優太、優太…私の生活には必ず“優太”が存在するようになっている…。
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きみの名を呼ぶ ©著者:金木犀
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