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7章:手の中から逃げ出した成功
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2002年、最終営業日。
僕は、大入り袋の中身のせこさに不満爆発ではあったものの、明日からの3連休で心は浮かれていた
考えてみると、まだ僅か半月ではあるものの[T]で過ごした時間は濃いものがあった気がする
社長との出会い
佐山さんとの出会い
井下君との出会い
“出会いはどれだって特別だろう”
某有名アーティストの曲にそのような歌詞があるが、まさしくだった
2003年はどうなるのか・・ いや、どうなるではなく、どうありたいのか、そんな事を考えていた
年末
28日、29日、30日、この3日間で[T]は恐ろしい数字を記録したのだ それと同時にその数字は結果として佐山さんの評価へに繋がった
当然の事ながら休む間もなくフル回転の女の子達
行き着く暇もない忙しさで[T]は閉店を向かえ、2002年の営業を終えた
「村上君、井下君、女の子達が帰った後で社長が来るからね」
最後にミーティングをするのだろう
「じゃあ、みんなお疲れさん! また来年ね! 良いお年を」
「店長、お疲れ様でしたー」
「来年もお願いしまーす」
佐山さんはえらく上機嫌だった 女の子たちも何が店長だ・・ 僕は最後まで心中毒づいていた
女の子達が帰り、看板が消され、社長を待つ
さっきまでの喧騒がまるで嘘のように静まり返る店内
このさほど大きくない箱であれだけの現金が飛び交う・・ 商売としては当たればでかいのはまだ素人の僕にでもはっきりとわかった
まさに《ドル箱》だ
カランカラン!
威勢よく開いたドアから、しめ縄を持った社長が現れた
「ご苦労さん!」
「お疲れ様です」
「ようやったな 佐山!」
僕や井下君も精一杯やっていたとしてもやはり評価されるのは佐山さんだった そして、この後社長は《勢いまかせ》と、捕らえてもおかしくないような発言をすることとなる―
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